スターバックスで無料でコーヒーを飲むことができるのをご存知でしょうか。
先日も、新大阪駅構内のスターバックスで、ただなんとなくコーヒー豆を見ていたら、すかさず店員の方が
「よかったら、1杯、いかがですか?」
と声をかけてこられました。
これが、また、けっこう美味しいコーヒーで。
そのとき私は、なんとなーくコーヒー豆を見てただけだったのに、やっぱり飲むと欲しくなってしまう。
で、結局、コーヒー豆を買っちゃったという話。(笑)
無料(とはいえない)試供品
返報性の威力は、言うまでもなく商売の世界においても見られます。
そうした例は多いのですが、馴染み深いものを一つ二つ検討することにしましょう。
マーケティングのテクニックとして、無料の試供品を配るというのは効果があるので長い歴史があります。
たいていの場合、当の製品を少しだけサンプルとして顧客になりそうな人たちに配布し、それを気に入ってくれるかどうかを見るわけです。
言うまでもなく、これは、製品の良さを一般の人びとに知ってもらいたいという、生産者の正当な欲求にもとづくものです。
しかし、無料試供品の強みは、それが一種の贈り物であることから、その場に返報性のルールを持ち込むという点にあります。
相手の力を利用して倒す柔道の技のように、無料試供品を配布する販売促進員は、表面は製品の存在を知ってもらいたいだけというような振りをして、実は、贈り物につきものの報恩の義務を利用して買わせようとするわけです。
無料試供品がよく提供されるのはスーパー・マーケットですが、そこではよく買物客が製品を少量渡されて、試してみるようにと勧められます。
多くの人にとって、笑みを絶やさない販売促進員から無料の試供品をもらって、いつも楊枝と紙皿を返すだけで立ち去ってしまうわけにはいきません。
むしろ、試供品がそれほど気に入ってなくても、その製品を少しは買ってしまうことになります。
「影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか」(著者:ロバート・B・チャルディーニ/出版社:誠信書房)
今回のスターバックスでの出来事は、「返報性のルール」という人間心理を利用したマーケティング手法のひとつです。
返報性のルールとは、「他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、似たような形でそのお返しをしなくてはならない」というもの。
お中元、お歳暮、バレンタインやホワイトデー、誕生日プレゼントなど、私たちは日常で何か贈り物をもらったときに、お返しをしなけれればと思ってしまいます。
その心理を巧みに利用して売上に結びつけるのが、無料試供品や無料サンプルを配るという手法。
私は、まんまとそれに引っかかったというわけです(笑)
新しいフリーを理解する者が、今日の市場を粉砕し、明日の市場を支配する。それはすでに始まっている。この本はそうした人々と、彼らが私たちに教えてくれることについて書いている。そして、過激な価格の過去と未来について―――。
「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」(著者:クリス・アンダーソン/出版社:日本放送出版協会)
無料の試供品、無料サンプルに限らず、今では「無料」を利用したマーケティング戦略は無数に存在します。
たとえば、「2500円以上の購入で送料無料」というように、ある一定の金額の購入を条件に送料を無料にすることで客単価を上げる手法や、「30日間無料でお試しください」というように、ある一定の期間、サービスを無料で利用してもらうことで多くの見込み客を獲得する方法など。
他にも、「女性は無料」として、たくさんの女性客を集めておいて、女性客を目当てに来店する男性客には若干高めの料金を提示することで売上アップを図る方法や、多くの無料ブログサービスがそうであるように、「無料で利用できるが、広告を表示させたくなければ有料」にする方法。
そして、最近、問題になっている「無料でゲームはできるが、アイテムを取得するためのガチャで課金する」というのも、「無料」を利用したマーケティング戦略といえるでしょう。
また、私は「ドリンクを注文するとカレーが無料」というサービスを飲食店で流行らせた経験がありますが、これも、ひとつのフリーからお金を生み出す戦略だといえるでしょう。
もし、あなたが何らかのご商売をなさっているのであれば、今一度、「無料」というものをじっくりと考えてみてはいかがでしょうか?
ちなみに、スターバックスでコーヒー豆を買うと「STARBUCKS BEANS CARD」というスタンプカードを作りませんか?と勧められます。
コーヒー豆のお買い上げ金額250円(税抜き)ごとにスタンプが1つ押され、26個貯まると「ケニア」のコーヒー豆(1,240円:税抜き)が1つもらえるというような特典付きのスタンプカードです。
6,500円分のコーヒー豆を買うと、1,240円のコーヒー豆が1つ無料でもらえるので、スターバックスのコーヒー豆をリピートする人にとっては、お得感はあります。
これも、ひとつの「無料を利用した顧客の囲い込み」という戦略ですね(^^)