いつかは独立起業して、自分のお店を持ってみたい。
そんな夢を持つ人は、少なくありません。
特にBARの経営などは、上手にやれば開業資金もおさえられるし、カッコいいイメージもあるので人気なようです。
しかし、いざお店をオープンしてみると、思うようにお客さんは来てくれません。
そのため、半年や1年そこらで閉店してしまうBARも、実は山ほどあるのです。
BARの経営で成功するためには、いったい何が大切なのでしょうか?
美味しいカクテル?美味しい料理?
バーテンダーによる上質なサービス?接客?上手な会話?
それともお店の雰囲気?
まぁ、人それぞれ、いろんな意見や考えがあるわけですが、BARに限らずカフェにせよラーメン屋にせよ、何かを「売り」にしないといけないわけです。
BARの経営で成功している店は、いったい何を売ってるのか?
そのひとつの答えが「非日常」です。
私がよく行くBARのひとつに「歌謡曲BARスポットライト」というお店があります。
このBARは、言ったら怒られるかもしれませんが(苦笑)カクテルも料理も、お世辞にも美味しいとは言えません。
接客やサービスだって、もっといいお店は山ほどあります。
でも、ものすごく流行っています。
いつ行っても、お客さんでいっぱいです。
福岡に2店舗、東京の新橋にもお店を出しました。
私も飲食店経営の経験があるのでよくわかりますが、BARの経営で成功するために、カクテルの味や料理の味はさほど重要ではないことがあります。
しかも、カクテルや料理の味で勝負しようと思えば、どうしても仕入れなどにお金がかかってしまい、結果、利益率を下げてしまう。
そうなると、いくらお客さんから美味しいと喜ばれても、経営的には厳しくなってしまいます。
その点、「歌謡曲BARスポットライト」は卓越したビジネスモデルを持った、数少ない繁盛店。
このお店で売っているのは「昭和の時代にタイムスリップする感覚」です。
店内には、1970年代、80年代にヒットした昭和歌謡曲が流れ、備え付けのテレビモニターには「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」などの歌番組の懐かしい映像も映し出される。
以前、こちらの記事にも書きましたが、1970年代、80年代の日本には「家族みんなで食卓を囲みながらテレビを見る」という習慣がありました。
つまり、おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも子供も、みんなで同じ歌番組を見ていた時代。
世代をこえて、みんなが知ってる曲が、たくさんあった。
また、今ほど娯楽も多くなかったので、みんな同じ曲を聴いたり、みんな同じテレビ番組を見ていた時代。
ピンクレディが歌番組に出た次の日には、学校でみんなが同じ振り付けを真似して遊んでる。
それが、昭和の時代の特徴なのだと思います。
「歌謡曲BARスポットライト」に足を運ぶと、そんな昭和の時代にタイムスリップした感覚が味わえます。
みんなが子供時代に戻る。そんな感じ。
50代、60代のお姉さま方が、ピンクレディの振り付けを真似していたり、40代のお姉さま方が工藤静香の振り付けを真似していたり、この店では、そんな光景をよく目にします。
中高年の方々が、日常を忘れて、子供に戻って癒される。
まさに「非日常」を楽しむ店、それが「歌謡曲BARスポットライト」なのです。
歌謡曲BAR「スポットライト天神」
(福岡市中央区天神2-3-5 ジャンティグリ3F)歌謡曲BAR「スポットライトJ」
(福岡市中央区大名2-1-51 マウンテン5 6F)歌謡曲BAR「スポットライト新橋」
(東京都港区新橋3-16-3 烏森ビル6F)
人は、「日常では味わえないもの」を欲しがる傾向にあります。
観光地で、お金を払って人力車に乗るのも、それが日常では味わえないからです。
京都などの観光地では人力車に乗りますが、だからといって、人力車を買ってマイカーのように利用しようとする人はいません。
それが日常になると欲しくないんです。
今回紹介した「歌謡曲BARスポットライト」をはじめ、流行っているBARは「非日常」を売るのがとても上手。
BARというものは、非日常を味わう「場」でもあります。
だから、「場」を売っているともいえるでしょうし、その場で生まれる「コミュニティ」を売っていると考えることもできます。
商品やサービスそのものを売るのではなく、「非日常」や「場」だったり、「コミュニティ」を売る。
BARや飲食店に限らず、他の業種でも共通して言える成功法則のひとつでしょう。